ヒト食道がん細胞TE-1の基本情報
由来と歴史
TE-1ヒト食道がん細胞株は、食道扁平上皮がん由来の上皮様細胞株であり、付着性増殖の特性を持ち、倍加時間は約60-80時間です。食道がんの研究に広く使用されています。この細胞株は、1976年に日本の科学者である西原らによって、食道扁平上皮がんの58歳の日本人男性患者の消化管組織から分離されました。

細胞特性
1. 形態と増殖特性: TE-1細胞は上皮様形態を示し、壁に付着しており、ヌードマウスへの移植が不可能です。
2. 生物学的特性: この細胞株は高分化型扁平上皮がんの特徴を示しますが、その生物学的特性と遺伝子発現パターンにより、ヌードマウスにおける腫瘍形成能が制限されています。
3. 遺伝学的検査: STR同定により、TE-1細胞株にマイコプラズマ汚染がないことが確認され、検査結果はその遺伝子型が元の組織と一致することを示しています。
培養条件
1. 培地: RPMI-1640培地が推奨され、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリンストレプトマイシン(P/S)を含みます。
2. 環境条件: インキュベーターは、温度37 ℃、空気95%、二酸化炭素5%の環境を維持する必要があります。
3. 継代方法: 推奨される継代比率は1:2から1:4で、継代間隔は2-3週間です。
凍結と輸送
1. 凍結条件: 無血清凍結液(DMSOなど)を使用して凍結し、凍結液は即座に調製して使用し、液体窒素中で保存してください。
輸送方法: ドライアイス輸送または回収輸送を使用でき、輸送中の細胞の融解を避けるよう注意する必要があります。
応用分野
TE-1細胞は食道がんの研究に広く使用されており、以下を含みます:
薬物スクリーニング: 抗腫瘍薬の効果を評価するために使用されます。
薬剤感受性と治療標的
1. β-cateninは、HSP70発現を下方制御することでTE-1細胞の生存を有意に阻害します[3]。
2. クルクミンは、miR-590-3pおよびJNK3/caspase-3シグナル伝達経路を調節することでTE-1細胞の増殖を阻害します[9]。
3. ピロチニブとX線照射の併用は、TE-1細胞の増殖と遊走を有意に阻害することができます[8]。
薬剤耐性と放射線感受性
放射線処理を受けたTE-1細胞は、より強い浸潤性と薬剤耐性を示しますが、シスプラチンに対する感受性は低下します[7]。
化学療法耐性
1. miR-7の過剰発現はEGFRの核内移行を増加させ、食道がん細胞のシスプラチン耐性を引き起こします[20]。
2. ストレプトマイシン(TM)によって誘導される小胞体ストレス(ERS)は、TE-1細胞のオートファジーとアポトーシスを促進し、化学療法耐性の可能性のあるメカニズムを提供します[17]。
分子メカニズム研究:
遺伝子と分子メカニズム
TCEAL7遺伝子:TCEAL7遺伝子の過剰発現は、TE-1細胞の浸潤および遊走能力を阻害することができます[1]。
SATB1遺伝子:SATB1遺伝子のノックダウンは、TE-1細胞の増殖、浸潤、およびアポトーシスを有意に阻害し、SATB1が食道がんにおいて重要な役割を果たしていることを示唆しています[5]。
CHST15遺伝子:CHST15のノックダウンは、TE-1細胞の増殖と成長を阻害し、アポトーシスを誘導します[4]。
miR-21の過剰発現はTE-1細胞のシスプラチン感受性を低下させ、miR-21の阻害はその感受性を高めます[6]。
MiR-27a: miR-27aはKRASを標的とすることでTE-1細胞の増殖と浸潤を阻害します[10]。
遺伝子発現分析:
遺伝子調節と治療標的:
CBP(サイクリックAMP応答エレメント結合タンパク質)の過剰発現は、TE-1細胞の増殖、浸潤、および遊走能力を有意に阻害することができ、治療標的としての可能性を示しています[12]。
SATB1遺伝子のノックダウンは、TE-1細胞の増殖、浸潤、およびアポトーシスを有意に阻害します[14]。
6. N-アセチルトランスフェラーゼ(NAA10)は、G1期を遮断しアポトーシスを誘導することでTE-1細胞の増殖を阻害します[23]。
臨床的意義と研究価値
TE-1細胞は、増殖、遊走、浸潤、薬剤感受性などの食道がんの生物学的特性を研究するために広く使用されています。例えば、RNA干渉技術を使用してCHST15やSATB1などの遺伝子の機能が研究され、食道がんにおける潜在的な治療標的が明らかになりました[4,5]
検索結果によると、TE-1細胞は、食道がんにおける増殖、遊走、浸潤、アポトーシス、および腫瘍微小環境に関連する分子メカニズムを調査するための複数の研究で使用されてきました。
1. 増殖とアポトーシス:
TE-1細胞の増殖能力は様々な方法で阻害することができます。例えば、β -エレメンは、Heat Shock Protein 70/Mothers against Decapentaplegic 2(HSP70/MAD2)経路を下方制御することでTE-1細胞の増殖を有意に阻害します。さらに、ビタミンEサクシネート(VES)は、高用量でTE-1細胞の増殖を有意に阻害し、アポトーシスを誘導することができます[18]。
HeCheTengアルコールのβ -シクロデキストリン包接複合体は、細胞周期を遮断しアポトーシスを促進することでTE-1細胞の増殖を有意に阻害します[16]。
2. 遊走と浸潤:
TE-1細胞は強い浸潤性と遊走能力を持っています。研究によると、TE-1細胞の浸潤能力はTranswell実験で評価でき、β -cateninで処理するとその遊走と浸潤能力を有意に阻害することができます[3]。さらに、p75NTR陽性細胞はTE-1においてより強い増殖能力と腫瘍形成能を示し、腫瘍幹細胞の特性を示します[2]。
TE-1細胞の遊走と浸潤能力は、様々な分子メカニズムを通じて調節することができます。例えば、miR-148aの過剰発現はTE-1細胞の遊走と浸潤能力を有意に阻害し、c-MycおよびマトリックスメタロプロテイナーゼMMP-9の発現を下方制御します[22]。
Tipタンパク質(Tip)は、Wntシグナル伝達経路を介してABCE1のアセチル化を阻害し、TE-1細胞の遊走と浸潤能力を有意に抑制します[15]。
3. 腫瘍微小環境と分子マーカー:
OSNORA42はDHX9と相互作用することで食道がん細胞の増殖、遊走、および浸潤能力を促進します[13]。
OcircPDE3Bはスポンジを介してmiR-4776-5pを吸着し、LAMA1発現を上方制御し、食道がんの進行を促進します[11]。
したがって、TE-1細胞株は食道がんの研究において重要な応用価値を持っており、その増殖、遊走、浸潤、アポトーシスなどの生物学的特性は、様々な分子メカニズムを通じて調節することができます。これらの研究は、食道がんの治療に向けた潜在的な標的と戦略を提供しています。
その他の研究進展:
OEGCGナノ粒子はTE-1細胞の増殖に有意な阻害効果を示し、その小核率、アポトーシス率、および壊死率を有意に増加させます[21]。
プエラリンなどのフラボノイドは、AQP1 mRNA発現を上方制御することで食道がん細胞の水輸送に影響を与えることができます[19]。
TE-1細胞は食道がんの重要なモデルであり、その研究は食道がんの発症機序を理解するだけでなく、新しい治療戦略の開発に重要な基盤を提供しています。
参考文献
1. Deng Qianxi et al.TCEAL7 gene overexpression inhibits the invasion and metastasis of human esophageal carcinoma cell line TE-1 in vitro. 21st National Conference on Gastrointestinal Diseases, Chinese Medical Association.[2021-12-16]
2. Li Xiaolei et al. Effects of SATB1 gene silencing on the invasion and migration ability of cancer stem-like cells in esophageal squamous cell carcinoma TE-1.[2018-01-01]
3. Beta-Elemene Suppresses Metastasis of Human Esophageal Cancer Cell by Downregulating Heat Shock Protein 70/Mothers against Decapentaplegic Homolog 2Pathway. W. C. Gao et al.
4. CHST15 promotes the proliferation of TE1 cells via multiple pathways in esophageal cancer. [PMID: 31746400]
5. Effect of SATB1 silencing on the proliferation, invasion and apoptosis of TE-1 esophageal cancer cells. [PMID: 28521398]
6. Li Chenhui et al. The influence of miRNAs on the occurrence and development of esophageal cancer and the intervention effect of Traditional Chinese Medicine. Zhongnan Pharmaceutical .22, No.2 (Total No.217). Zhongnan Pharmaceutical.
7. mRNA and methylation profiling of radioresistant esophageal cancer cells: the involvement of Sall2 in acquired aggressive phenotypes. Judong Luo et al.[ PMID: 28367244]
8. Radiosensitization of HER2-positive esophageal cancer cells by pyrotinib. [PMID: 32022229]
9. Qin Wenbing et al. The effect of curcumin on the sensitivity of 5-FU chemotherapy in esophageal carcinoma cells. Chinese Traditional Patent Medicine. Vol. 45, No.3, March 2023.
10. microRNA-27a functions as a tumor suppressor in esophageal squamous cell carcinoma by targeting KRAS. [PMID: 24154848]
11. Circular RNA hsa_circ_0000277 sequesters miR-4766-5p to upregulate LAMA1 and promote esophageal carcinoma progression. [PMID: 34226522]
12. Overexpression of Csk-binding protein decreases growth,invasion, and migration of esophageal carcinoma cells by controlling Src activation. [PMID: 25684946]
13. SNORA42 Promote Oesophageal Squamous Cell Carcinoma Development Through Interacting With Dhx9. et al. [PMID: 34182081]
14. Effect of SATB1 silencing on the proliferation, invasion and apoptosis of TE-1 esophageal cancer cells. [ PMID: 28521398]
15. Tip60-siRNA Regulates ABCE1 Acetylation and Inhibits the Proliferation, Migration and Invasion of Esophageal Cancer via the Wnt Pathway.” Journal of Biosciences and Medicines(2022).